1.「閉塞感」を脱ぎ捨て、心から深呼吸できる空間へ
――新しい診療室に足を踏み入れた瞬間、まずその天井の高さと開放感に驚きました。
以前のイオン内の診療室を知っている方からすると、劇的な変化ではないでしょうか。
長谷川院長:
そうですね。
イオンの中の診療室も、買い物ついでに寄れるという便利さがあって賑やかで良かったのですが、どうしてもスペースに限りがあり、どこか「閉塞感」があったのは否めません。
移転を考えたとき、私が一番に求めたのは「患者さんが心からリラックスできる空気感」でした。
今の診療室は天井が高く、窓からは自然光がたっぷりと入ります。
歯科医院特有の、あの「閉じ込められたような不安感」をなくしたかったんです。
内装を白で統一したのも、ただ綺麗に見せるためだけではありません。
医療機関としての清潔感を担保しつつ、視覚的なノイズを減らすことで、患者さんが自分の心と体の状態に集中できる環境を整えたかった。
待合室に座ったときに「あ、ここは少し違うな」と感じていただければ、それだけで治療の緊張感は半分くらい解けるものだと思っています。
2.問診票で真っ先に「職業」を確認する理由
――院長の診療スタイルは、非常に「感性的」というか、データや数値だけではない「その人らしさ」を大切にされていますね。

長谷川院長:
もちろんエビデンス(科学的根拠)は医療としての大前提です。
でも、お口の中の状態だけを見て「はい、ここを削りましょう」というのは、私は本当の医療ではないと考えています。
実は、私が問診票を手に取って最初に目を向けるのは、お悩みの内容と同じくらい「ご職業」の欄なんです。
――職業、ですか? それはなぜでしょう。
長谷川院長:
お口のトラブル、特に痛みや違和感の多くは、その方の「生活習慣」から生まれるからです。
例えば、肉体労働をされている方は、重い荷物を持つ瞬間にグッと歯を食いしばる癖があることが多い。
公務員の方やデスクワークの方は、精神的なストレスから無意識に夜中の噛み締めが強くなる傾向があります。
最近では、スマホやパソコンを長時間使う方の「うつむき姿勢」が原因で、顎に負担がかかっているケースも増えています。
「歯が痛い」という結果には、必ずその方の「日常」という原因があります。
だから私は、歯を見る前に「この方は普段、どんな風に過ごされているんだろう?」という背景を探ります。
いわば、患者さんの生活スタイルというパズルを解き明かしながら、その方に無理のない治療計画を提案する。
それが私のスタイルですね。
3.「お掃除屋さん」で終わらせない。衛生士の専門性への誇り
――「予防歯科」を掲げる医院は多いですが、院長が考える「本物の予防」とはどのようなものでしょうか。
長谷川院長:
一番の違いは、歯科衛生士の立ち位置です。
多くの医院では、ドクターの治療の合間に衛生士がクリーニングを行う「作業」になりがちですが、当院では開業当初から「衛生士が独自の予約枠を持つ」スタイルを貫いています。
これは、私が勤務医時代にいくつかの医院を渡り歩いて感じた「違和感」が原点になっています。
ドクターの指示でただ歯石を取るだけの、いわば「お掃除屋さん」のような扱いでは、衛生士の専門性は活かされません。
患者さんにとっても、毎回違う人が流れ作業で診るより、自分の口の状態を何年も把握している「パートナー」が隣にいる方が、圧倒的に安心ですよね。
――担当制にすることで、患者さんとの関係性も変わりますか?
長谷川院長:
劇的に変わります。
衛生士が自分の枠を持つことで、患者さんの生活の変化や、ちょっとした体調の波にも気づけるようになります。
「最近忙しそうですね」とか「食生活が変わりましたか?」といった何気ない会話の中に、予防のヒントが隠されているんです。
衛生士にとっても、自分が責任を持って一人の患者さんを診続けることは、大きなやりがいとストレスの軽減に繋がります。
患者さんとスタッフ、両方が「同じ目標」に向かって歩める体制。
それが、当院が誇る予防のカタチです。

4.顎関節症と「口が開く喜び」
――院長は口腔外科のご出身ということで、顎関節症などの悩みで来院される方も多いと伺いました。

長谷川院長:
「口が痛くて開かない」「噛むと音がする」といったお悩みですね。
私はこれを、お年寄りが膝を悪くするのと同じような現象だと説明しています。
関節の可動域が狭くなっているんです。
面白いことに、多くの患者さんは自分が「食いしばっている」という自覚がありません。
でも、お話ししながら筋肉の緊張を解いてあげたり、日常生活での「癖」を意識化する「認知行動療法」を取り入れたりすると、皆さん思った以上に口が開くようになります。
――「認知」するだけで変わるものなのですか?
長谷川院長:
変わります。
無理にマッサージをするよりも、「今、私は噛み締めているな」と気づくだけで、筋肉はふっと緩むんです。
ストレッチや柔軟体操と同じで、無理なく可動域を広げていく。
治療の前に、まずは口を楽に開けられるようにする。
これだけで治療の精度も上がりますし、何より患者さんが「食事が美味しくなった」「喋りやすくなった」と喜んでくださる。
その笑顔を見るのが、この仕事の醍醐味ですね。
5.東上線と共に歩んだ20年。地域へのメッセージ
――柳瀬川、朝霞、そして志木と、長谷川院長はずっと東武東上線沿線で診療を続けてこられましたね。
長谷川院長:
そうですね。
思えばもう20年以上、この沿線の空気の中で生きてきました。
特定の理由があったわけではなく、最初はご縁から始まったのですが、今ではこの街の人たちの気取らない温かさが自分に合っているなと感じています。
中野で長く勤務していた時期もありましたが、やはり私のベースはこの東上線エリアにあります。
移転しても、イオン時代から通ってくれているお子さんたちが中学生、高校生になり、部活の話や受験の話を聞かせてくれる。
それは、一箇所に腰を据えて診療を続けてきた人間だけが味わえる、かけがえのない財産です。
6.出身の方、そして初めて来院される方へ
――この記事を読んでいる地域の方々や、これから初めて来院される方へメッセージをお願いします。
長谷川院長:
「歯医者は痛くなってから行く場所」と思っている方も多いかもしれません。
でも、本来の歯科医院の姿は、皆さんの「美味しく食べる」「楽しく笑う」という当たり前の日常を支える場所にあります。
私自身、年齢を重ねるごとに「腰が痛いな」なんて感じることが増え、メンテナンスの大切さを身に染みて感じています(笑)。
だからこそ、患者さんには「無理をせず、自分のペースで長く通える場所」を提供したい。
当院は、決して敷居の高い場所ではありません。
東京電力さんのビルの1階という少し変わった場所にありますが、中はアットホームで、家族のように寄り添うスタッフが待っています。
もし今、お口の中に少しでも違和感があったり、あるいは「最近、メンテナンスしてないな」と思ったりしたら、ぜひ一度遊びに来る感覚でドアを叩いてみてください。
私たちは、あなたの「歯」だけを診るのではなく、あなたの「これから」を一緒に支えるパートナーでありたいと思っています。
7.10年後の未来:ドクターが「動かない」理想の医院
――最後に、10年後の「はせがわファミリー歯科」はどのようになっているでしょうか。
長谷川院長:
究極の理想を言えば、私は診察室の椅子に座っているだけで、衛生士さんと患者さんが楽しそうにメンテナンスの話をしている……そんな光景ですね(笑)。
私が治療で走り回っているということは、それだけ誰かが痛い思いをしているということです。
そうではなく、メンテナンスだけで医院が回り、皆さんが「今日もスッキリしたよ」と言って帰っていく。
そんな「予防が当たり前の文化」がこの志木に根付き、地域の皆さんが一生自分の歯で、美味しいものを食べて笑っていられる。
そんな未来を、この新しい診療室から作っていきたいですね。
【編集後記】
インタビュー中、長谷川院長は何度も「空気感」という言葉を使われました。
それは、目に見えないけれど、患者さんが最も敏感に感じ取る「安心感」の正体なのかもしれません。
確かな技術に裏打ちされた冷静な判断力と、患者さんの生活に寄り添う温かな感性。
その両輪で走り続ける「はせがわファミリー歯科」は、志木の街にとって、なくてはならない「健康の守り神」のような存在になっていくのだと感じました。




